学会の活動
日本広報学会賞
概要Outline
2024年度 (第19回) 日本広報学会賞
日本広報学会賞は2024年度で第19回となる。本年度の学会賞の対象となるのは、本学会の会員が2023年4月1日から2024年3月31日までに公刊した図書・論文である。自薦・他薦で応募のあった作品のうち、5点が本年度の選考の対象となった。内訳は研究部門が3点、教育・実践部門が2点である。
7月26日に第1回委員会を開催し、学会の定める「日本広報学会賞規定」に基づき審査の方針を確認したうえで、各委員による個別の審査に入った。その後、9月10日に第2回委員会を開催し、各委員から提出された評価報告書に基づき慎重な審議を行った。この結果、以下の通り「研究奨励賞」1点、「教育・実践貢献賞」1点を決定した。
本年度は、研究部門への論文の応募が少なかったことが残念である。今後、会員からのより積極的な論文の応募を期待したい。
(研究奨励賞)
「中小企業における CSR コミュニケーションの現状と課題 」 -インタビュー調査からの考察
山﨑 方義
本論文は、中小企業が展開するCSR活動と、これに伴うコミュニケーションの現状と課題を明らかにしたものである。中小企業におけるCSRコミュニケーションという、これまで研究の蓄積が浅かった領域に焦点を当てた本論文の試みは、たいへん意義あるものといえる。
筆者によると、日本経済に占める中小企業の割合が大きいにもかかわらず、従来のCSR研究は大企業が中心であり、中小企業を対象とする研究は限定的だったという。この問題意識を背景に、CSR領域の先行研究を丁寧にレビューしたうえで、中小企業6社への探索的インタビュー調査を実施している。6社の事例を丁寧に整理し、横断的な考察も行っており、研究の独自性、将来性は高く評価できる。
一方で、筆者も自覚しているように、本研究はサンプル数が限定的な定性調査であり、中小企業におけるCSRコミュニケーションの実態を一般化するためには、インタビューの追加調査による事例の蓄積や、定量的な調査も加えていく必要があるだろう。今後の研究に期待したい。
(教育・実践貢献賞)
『戦略的に成果を上げる! 自治体広報のすごい仕掛け』
河井 孝仁
本書は、自治体において広報企画を行う担当者が、戦略的に成果を上げるための考え方やアプローチ、具体的な手法を体系的に示したものである。広報企画への臨み方から企画のチェックポイント、実践するうえでの注意点などをまとめたマニュアル的な教育実践書といえる。
広報企画の具体的な手順については、独自の「メディア活用戦略モデル」に基づいて説明している。学術的なモデルや理論を簡略化して示すなど、実務書としての様々な工夫がなされており、広報の初学者にとっても理解しやすい内容となっている。本書の目的として主張されている、「効果的」な広報企画を「楽に」「簡単に」つくること、とのメッセージはシンプルで訴求力がある。
このモデルで示されている9つのステップについては、マーケティングプロモーションの手法なども組み込まれており、ステップ間の流れもわかりやすく論じられている。各章の終わりには自治体による具体的な広報事例も示されており、担当者の理解を深めるのに役立つであろう。